舞台『呪術廻戦』観てきました。

大好きなマンガの舞台化、しかも大好きな役者さんたちが出演するってことで、なんとしても見ておきたかった舞台『呪術廻戦』。幸運にもチケットを手にすることができたので先日観劇してきました。

 

率直な感想をいうと、エンタメ作品としてはとても面白く、その一方で2.5次元作品としては疑問が残るものだったなあと。だから、「面白いものをみた」っていう充足感と、「大好きなものを蔑ろにされた」っていう悲しい気持ちが同時にあって、心が複雑骨折してるんだよね。あ、先に言っておくと、役者さんたちは500000000点でした!

 

今回描かれたのは、マンガの1~4巻。アニメだと1クールかけて描いた物語が、約2時間半に凝縮されます。だから、ここが駆け足になっちゃうのはどうしても避けられない。1話完結のエピソードを繋いでいくタイプのお話ではないから、なかなかカットできないし。だから、ここに関してはそこまで不満もなく、むしろよくまとまってた方だと思います。

 

じゃあなぜ「大好きなものを蔑ろにされた」と思ったのか。それは、あまりにも演出が“ふざけすぎていた”んだよね。いや、全編ふざけ散らかしていたわけではないんです。シリアスなシーンもあったし、プロジェクションマッピングをバキバキに使った演出もあって視覚的にとても楽しかった。ただ、なんていったらいいんだろう、サブカル特有の悪ノリというか、斜に構えてあえてチープにする演出が、作品への没入感を削いでしまったんだよね。とくに書き割りをつかった演出は、プロジェクションマッピングへのささやかな抵抗みたいなもんだと思うんだけど、虎杖の生還シーンがまるでギャグのように扱われてしまい「ソウジャナイ……」と悲しくなってしまった。シリアスな作品が偉いわけでもないし、緩急がないと見ている方も疲れてしまう。ただ、原作に時々挟まれるコミカルさを都合よく増幅させて、根底にある世界観を覆ってしまったら本末転倒なんじゃないかな、と。緩急っていうよりもむしろノイズになってしまったんだよね。この辺の余計な部分をカットして、もっとキャラにフォーカスしてほしかったっていうのが正直なとこです。葛藤があるからこそ、その先のカタルシスがあるのに、なんかこう、ポンポンポーンって進んでしまった感じがあって、それは尺がどうこうって話でもないんだよね。

 

そういえば「『ステ』なのに歌ってた!『ミュ』じゃん!」っていうのもツイッターでちらほら見かけましたが、これに関しては正直瑣末なことというか、2.5あるあるなので、アタシはそこまで気にならなりませんでした。むしろ歌うまメンツを揃えているんなら、歌ってほしさすらある。ただ、歌わせるならやっぱり意味のあるものにしてほしかったっていうのはあります。ちゃんとミュージカルにしろなんていうつもりはサラサラないけれども、セリフを歌にしただけっていうのはちょっと安直すぎるのよ。あと、これは真希さんが大好きだから思うんですけど、「苗字で呼ぶな」っていうくらい「禪院」を憎んでいるのに、フルネームで「禪院真希」って繰り返し歌うのは違和感しかないんだよな。

 

プロジェクションマッピングを使った殺陣はぱっと見派手でとても楽しかったけど、せっかく肉体を使った表現ができるんだから、ここはもっとバキバキのアクションにしてもらいたかったなーと。おそらく、映像との兼ね合いもあって動きが制限されていたんだとは思います。でも、ジャンプのバトルもののアクションだぞ!もっともっと肉体でやりあうのが見たかった……流司くんとかめちゃんこ動ける子じゃんねぇ。

 

とまあ、こんなに不満たらたら言ってますが、作品としての全体の印象は前途のとおり「面白かった」んですよね。そう思わせてくれたひとつが、キャストの再現度。

2.5次元舞台の原初的な喜びって、「大好きなあのキャラクターが肉体を得て動いている」っていうところにあると思うんです。そういう意味では、キャラがちゃんと生きていました。今回楽しみにしていたのは、キャラビジュアルがでた時点で「こんなん優勝じゃん……」ってなったもっくんさんの真人と、どの作品でもキャラ愛を爆発させてくれる藤田玲さんの夏油。

真人はピュアな悪としてステージを縦横無尽に駆け回り、笑顔の奥に潜む底気味の悪さが最高でした。夏油は見せ場が少なかったのですが(これは原作通りだからしかたない)、声もアニメに寄せていて、存在感があってよかったなー。そして、今回割とノーマークだったけどめちゃんこよかったのが、わだまささんのナナミン! なんだかんだで結構お芝居をみているので知った気になっていたのですが、ここまでキャラクターに“尽くして”くれる人なんだなーと改めて驚きました。めちゃくちゃナナミンだったよ……。ごじょせんはあの一瞬で全部持っていってましたね。オペラグラス、スチャってしましたし。漏瑚と花御は“本物”だったし、パンダはパンダでした(パンダ)。女性陣もかわいかったなー。野薔薇ちゃんと真希さんの絡みもっとくれ……(これはただの趣味です)

 

てな感じで、エンタメとしては楽しかったので、呪術廻戦に思い入れがない人は多分普通に飽きることなく楽しめたと思います。実際同行した知人はそこまで原作が好きなわけじゃなかったので、とても面白かったと満足していました。わかる。そうなんだよ。こっちも笑うとこでは笑ってたし、手触りとしては全然悪くなかったんだ。でも、やっぱりね、原作と同じ空気をまとった作品が見たいんです。だって、それが2.5次元舞台の醍醐味だし、アタシはそこにお金を払いたいから。

 

まさかの第7波到来で舞台が軒並み中止になっている中、走り続けている作品は奇跡です。まずは1公演でも多くやれて、叶うならば最後まで上演できますように。おそらく次作もあるだろうから、そのときはいろいろいい方向に進んでたらいいな。色んな意味で、ね。

劇団ドラマティカ ACT2 Phantom and Invisible Resonance 初見の感想

ということで、劇団ドラマティカ ACT2 Phantom and Invisible Resonance を見てきました。

 

※以降、ネタバレがあります※

 

前回のACT1が本当に好きすぎて、2021年の個人的アワードでした。

 

ucok.hatenablog.com

 

 

本当に大好きだったからACT2にもめちゃくちゃ期待してたのですが、いささか期待し過ぎちゃったのかもな~っていうのが初見の感想です。多分、アタシだけじゃないっておもうんですけど、やっぱりね、思っちゃったんですよ

 

「え~~~~~~~ここで終わり~~~~!?」

 

ああん、そうなのね、2人にはこんな過去があって、やっと手を取り合って、ここから最終決戦に……ならないんか~~~~~~~い!!!!!!

 

全力でズコー!ってしました。こんな、こんな、こんな美味しい要素がそろったのに決着をつけんのか? さすがにこの結末は乱暴すぎないか? 俺たちの戦いはこれからだエンドは、ジャンプの打ち切りだけにしてくれ~~~!!!!

いや、決着をつけるってことはアイドルの誰かが役とはいえ殺されることになるだろうし、おそらくそれはNGなんだろうなってフワッと思っています。近しい作品だと「劇団シャイニング」では、なにがなんでもアイドル(二代目)に殺しをさせませんでしたし、なんとなく扱っているコンテンツ的にそういう縛りがあるのかな~ってのも思うんですけど!ですけど!ここまでやったら見せてくれよ~~~~~!

はぁ~ん、Phantom and Invisible Resonanceの頭文字でPaIR(ペア)ね、なるほど~ってことで、描きたいのはおそらく「彼らがペアになるまで」ってこともわかる。わかるんだけど、えええええん、見たいよ~~~!

 

ってことで、結末に対して消化不良を起こしまくっているのですが、好きなところもたくさんありました。

 

なにより最高だったのが「笠舞歩」の存在です。

そりゃあ北斗くんが推しだし、山本一慶くんが推しだから当然だろって感じではあるんですがw。北斗くん(一慶くん)が番手のトメにいた時点で、「これは推しがファントムだ、間違いない」って言ってたんですけど、概ね正解でしたね。結局のところファントムってのは明確に誰って言われてなかったように思うので、彼らテロリストの集合体が生み出した概念なのかなと思ってますが、まだ1回しか見てないからこの辺はちょっとふわっとさせておきます。

 

追記:歩ちゃんが「ファントム」って呼ばれたり、「ファントムが近くにいるのに気づかなかった」みたいなセリフあったから、歩=ファントムってことでよさそうですね!

 

 

始まる前から言い続けてたファントム説w。

 

メサイア履修済みのせいで、一幕ラストで倒れた歩を見ても「銃で死ぬわけがなかろう……」って思ってたんですけど、二幕で裏切り者として現れた時「これ~~~~!待ってたやつこれ~~~~!」って大喜びしてしまいました。推しのこの手のお芝居大好きなんですよ。北斗くんをどう乗っけてくるかってのはあったんですが(地毛ってこともあって他の人よりもキャラ味が分かりにくいんだな……)、ステ北斗のプロなのでその辺りはあんまり乖離してないかな、と。原作では「ズ!」の終盤時点で役者としてめちゃくちゃ成長しているので(必修科目こと「透明と仮面」より)。警察サイドにいた一幕と、ファントムサイドの二幕での体の使い方(わかりやすいところだと歩き方)が全然違うのにも興奮しました。殺陣が最高なのは言わずもがな。紐?ロープ?の殺陣が新鮮でおもしろかったので、これは次回入った時に注目しようと思います。

 

嵐ちゃん演じるルシカ、レオぴが演じる斗真に対しては、過去を明かされるのがだいぶ後半だったこともありなかなか感情移入ができなくて、「んも~~もっと仲良くしなよ~」って気持ちが先に来てしまったけど、優しすぎて身を滅ぼすようなレオぴがキレッキレの役を演じていたり、お姉ちゃんな嵐ちゃんが男前な役だったのは、“ドラマティカでしか見られない姿”なのでここはシンプルに楽しかったです。凪砂くん演じるギィの妖しさ、宗くん演じる和蒜の不遜な態度もよかったな。ここに関してはバスっとハマり役って感じ。そして、渉の京極さん!え~~~~~~~~~ん好き~~~~~~~~!!!!!(急にバカになるな)。ビジュアルも振る舞いもなにもかもがかっこいい……。ちょっと古めかしいかっこよさではあるんですけど、そこも含めてたまりませんでした。そして今回も描かれてしまった(事故みたいにいうな)北斗(歩)から渉(京極)へのビッグラブ……。歩は京極を裏切っていたのだけれども、京極に憧れていたっていうのはどうやらウソではなさそうなんだよな。ACT1に続き、2でもここの2人の関係性を押し出されてしまって、演劇部推しの女としてはヘロヘロになってしまいました。好きか嫌いかって聞かれたらウルトラ大好きです……。

 

てな感じで、脚本に関してはちょっと不満ありつつも、なんだかんだで楽しんでいました。まだ1回しか観劇していないんで、最終的には見え方が変わってくるかも? まぁ結末は変わることないので、ここに対しての残念だな~~~~って気持ちは変わることはないのだけれども。

 

まだまだACT2の幕が上がったばかり。ラストまで怪我なくやりきってください。

「彼岸」と「此岸」が交わる場所で ー『真剣乱舞祭2022』ふわっと考察ー

”あの祭り”が帰ってくる!!!!!!!!!!!!!!

 

ミュージカル『刀剣乱舞』が6周年を迎えた日、新作公演のお知らせとともに舞い込んだのが『真剣乱舞祭2022』の開催の一報。それと同時に、ファンの間で”名作”との呼び声が高い「真剣乱舞祭2018」がトレンド入りしました。制作陣も「(2018で)祭りの形が完成された」とし「真剣乱舞祭」は以降封印されていたので、実に4年ぶりの開催です。新規グッズのペンライトが2018に登場したこんのすけのねぶた型(めちゃかわー!)ってこともあり、”あの祭り”を継承しているのかな、となんとなく思っていました。

そして蓋を開けたら、なんと”あの祭り”のセルフオマージュだったんです!

 

基本的な構成はこれまでの乱舞祭と同じく、ストーリーテラー的な刀剣男士がいて、その人物を中心にテーマが打ち出され、それに沿って物語が進んでいく。今回のお当番は水心子くん。刀ミュにおいて”祭”は「夢と現」「彼岸と此岸」が交わる場所と位置付けられていて、2016では夢現の中で清光を取り合い、2017は彼岸と此岸の狭間で百物語が繰り広げられ、2018は彼岸と此岸それぞれの祈りが描かれました。

さて、セルフオマージュとはいえ、テーマは刷新されます。これについては考察するまでもないと言うか、「神送り」と歌っているのでズバリそれだろうね。とはいえ、ここで言われているのは、出雲大社のものではなく、どちらかというと「葬送」に近いのかな。彼岸と此岸が交わる“祭り”の中で、楽しみ、遊び、そして此岸から彼岸へと送り出す儀式。となると、さしずめ花道は三途の川、舟は彼岸へ送る渡し舟ってとこかな。そんな「死の象徴」みたいな渡し舟からひょっこり顔を出したのが、持ち主とともに埋葬されたのち墓暴きにあった鶴丸っていうのが、なんとも絶妙だよね。

彼岸に送り出されるのは、『東京心覚』に出てきた「山吹の君」(便宜上ここではそう呼びます)と、「将門公」。山吹の君に関してはいろいろな解釈ができると思うけれども、アタシは、具体的な誰かを指しているのではなく、歴史には名を残さなかった数多の人々の象徴だと考えています。そして、その真逆に位置する、誰もがその名を知る将門公。日本三大怨霊とまで言われていて『東京心覚』では怨霊化した将門公を封印するシーンも描かれました。でも、あれって、結局力ずくでの封印だったんだよね。怨霊になってしまった後だから、仕方ないっていえば仕方ないんだけど。だからこそ、今回、ちゃんとその魂を彼岸に送ろうとしているのかな、なんて思いました。そう、この祭りは数多の命の「葬送」であり、将門公の「鎮魂」でもあるんだよね。

前途のとおり、祭りパートは2018年のセルフオマージュとでも言うべきラインナップ。日本各地の祭りをモチーフにしたメドレーが続くけど、今回は男士たちが東西に別れることなく、初めから入り乱れている。そして、北海道の「雪まつり」がなくなって沖縄の「エイサー」がイン。沖縄復帰50周年ってのもフワッと関係してるかもしれないけれども(そして琉球刀参戦の匂わせだったらアタシが大喜びするけど)、これ多分「盂蘭盆会」のお祭りが中心になっているよね。祇園祭は疫神や怨霊を鎮める御霊会だから、そういった意味では将門公にうってつけだし、他の祭りは霊を「此岸」に迎え、再び「彼岸」へと送るものなんだよね。(まぁそもそもお祭りってそう言う性格のものが多いんだろうけど)

そんな中でかなり異彩を放っていたのが榎本武揚。彼もまた彼岸からやってきた人ではあるけれども、山吹の君や将門公とは決定的に違う。なぜなら、彼は自分が進むべき道を知っているから。彼が向かうのは「北」、そして「未来」。『むすはじ』で指していた「北」は額面通りの方角だろうけれども、こと祭においては「彼岸」を指しているんだと思います。(2018でもどこへ向かったらいいかわからなくなった歴史上の人物を「北」に導く描写があったよね)。彼が乗ってきたのは、電飾ギラギラのド派手な船。「エレクトリカル開陽丸」なんてうまいこと言ってる人を見かけたのですが、どこに向かうべきかわからない暗闇を先導するのに必要なのは「灯り」です。それゆえ男士たちも松明を手にし、「この灯り 道しるべ」と歌っていたわけで。冗談みたいに眩しい船だったけど、「彼岸」へ導く船としての灯りだと思うとなんらおかしいことではないんだよね。

 

こちら側から送り出され、あちら側からも迎えがきた将門公はどうなったのかーー。実はよく見ると、彼がいわゆる怨霊の姿でいたのは、冒頭の船で現れたシーンだけなんだよね。あそこだけ、白髪混じりの怨霊となった将門公だったんだけど、祭りパートで出てきた甲冑姿や、その後の烏帽子姿などなどは、怨霊化する前の“人間・平将門”なんだよね。そしてクライマックス近くでは、怨霊化した6体を自らの手で断ち、その6体が将門公の中に還っていく。そう、もはや怨霊ではなくなったんです。

「我をどう見た」

そう問う将門公に、水心子は答えます。

「水面に映る姿は、怨霊と思わば怨霊、神と思わば神。人と思わば人なり」と。

水面に映る姿とは揺らぎやすく、絶対的なものではないけれども、その中に“人間・平将門”を見たのなら、きっとそれが答えなんだろうね。(だからこそ、水心子くんが「前に進む」と誓ったときに己の姿を映すのは、決して揺らぐことのない刀身だったんだろうな)

 

ラストが『問わず語り』になるのはなんとなく予想していたけど、『東京心覚』のときとはまた違って聞こえました。それぞれの男士たちがこれまで関わってきた多くの命ーー自分の元主だった人もいれば、歴史に残らない人もいてーーそんな全ての命に祈りを捧げているようだったんだよね。あぁ、そうか、この祭りは彼らに対しての鎮魂でもあったんだ。そしてその中にはきっと、山吹の君のような人たちもいるんだろうね。

 

さて、無事に将門公を成仏させたわけですが、そもそもなんで刀ミュ本丸はこんなバカデカいお祭りで彼を彼岸へ送ろうと思ったのかーー。それは、かつて疫病が流行ったときに「平将門の祟り」だといわれ、彼を祀ったことによって疫病が治まったという伝承になぞらえているのでは? とわりと本気で思っています。そう、つまりは「疫病退散!!!!!!」ってわけよ。

 

総括のような勢いで書いていますが、真剣乱舞祭2022はまだ前半戦。これから日本各地でたくさんの祭りが行われます。刀ミュ本丸のみんなが、どうか最後まで無事に駆け抜けられますように! 疫病退散!!!!!

ミュージカル『刀剣乱舞』〜江水散花雪〜 観てきました!

刀ミュの新作『江水散花雪』がついに大千秋楽を迎えます。いろいろ色々心配事が続きましたが、キミたちに会えて良かったよ!!!!

思えば初日配信から狂っておりまして、思いついてはふせった等に書き散らかしてましたね。だって、今まで見たことがない刀ミュだったんですよ!新作だからそんなの当たり前って思うかもしれませんが、そういうことじゃないんです。今までない切り口で、原案のゲームの内容にもガッツリ触れていて、さらに新たな設定も追加されて。この先の展開がさらに楽しみになる、”新しい”ワクワクが詰まっていたんです。

※ここから先は、過去作を含め息を吐くようにネタバレします※

桜田門外の変」を描いた月岡芳年の浮世絵『江水散花雪』と同タイトルということで、大方の予想通り、幕末を舞台にした井伊直弼関連の物語のようでした。

「ようでした」

井伊直弼の話ではあるけれども、アタシたちが知ってる井伊直弼の物語ではなかったんですよね。

ストーリーは、大包平、小竜、南泉の三振の遠征任務から始まります。この三振は顕現されて間もない、比較的練度の低い子たち。おそらく歴史改変の予兆みたいなのがあって派遣されたんだろうね。そこでいきなり、井伊直弼吉田松陰が邂逅するというまさかの出来事が起こってしまうんです。

出会うはずのない二人が出会ってしまった事によって、歴史があり得ない方向にねじ曲がり、修復不可能な状態へと進んでいくーー。

そう、今作は「世界が放棄される様子」を描いているんです。と、特命調査……

状況としてかなり”ヤバい”ことになりそうだと察した審神者は、本丸の古株の一振り・山姥切国広に合流するよう指示を出すんだけどここでの会話、かなりヒュッてなるんだよね。だって、この時点で審神者とまんばちゃんはとっくに気づいているんですよ。だから”あの世界”=”放棄された世界”を知っている長義の名前が普通に出てくる。そして審神者はまんばちゃんのパートナーに肥前を指名したんだけど、その理由をあえて”あの時代”=”幕末”に精通している刀だといってさらっと話題をすり替えているんですよね……。こっわ!

でも我々も審神者業(ゲーム)をしているから知っているんですよ。肥前くんも特命調査で”あの世界”にいっていたことを。

 

以降、歴史がねじ曲がったまま物語はどんどん進んでいきます。直弼にゆかりのある小竜くんだけは、直弼と松陰の邂逅の重大さを察し松陰と行動をともにしたんだけど、練度が低いせいなのか、そこからはなかなかにガバ。たとえば、松陰が会沢正志斎に会って影響を受けた「事実」はたしかに史実通り。でも、そこで正志斎が説いた水戸学は、尊王攘夷思想とは真逆のものだったんだよね。

乱暴にくくると、幕末は”思想の違い”で殺し合っていたようなもんなので、その思想が違うってことは、もう歴史が変わっている証でしかないのよ。でも「これは史実通りで問題ない」という判断になってしまうんだ……。「誘い込まれている気がするんだよね」って真っ先に気づくくらい察しはいいのにね。ただ、そんな小竜くんだからこそ、最後までこの歴史を修正できると信じていたわけなんだけど。

そして、肥前くんもこの歴史を修正できると信じていた一振り。

史実通りにするために、元の主・岡田以蔵に代わって「人斬り」の役割を果たします。でも改変された歴史の中では、それさえも無意味で虚しいだけなんだよね。「人を斬ってなんになるというのです!?」と肥前くんに問う“きれいな”以蔵の言葉は、以蔵のアイデンティティを全否定するもので、本来の以蔵に激しく投げつけるブーメランでしかない。

世界が放棄された後、そんな以蔵から刀(つまりは自分自身)を奪いその刃で殺め、命が潰えそうになってもなお刀を求める以蔵に、そっとその刀を返す肥前くん……。以蔵が背負っていた悲しい役割の先に自分がいるんだと言うことに、いやってほど向き合って、そこから立ち上がったんだもんね。キミはとても強いよ。

そんな肥前くんの「人斬り」を否定せず、気が済むまでやればいいといった兼さん。極になったのもあり、今回はずーっとみんなを見守っていたんだけど、変えられてしまった歴史に、静かに憤っていたのが印象的だったな。

新撰組はいまでこそ人気コンテンツ(こんな言い方するのやだけど便宜上ね)だけど、逆賊扱いされていたときもあって、両手を上げて幸せだったとは言い難い歴史を持っている。それでも、兼さんにとっては、箱館戦争で命尽きてしまうトシさんがすべてだったんだろうね。トシさんへのビッグラブソング、最高だったぜ……。

それにしても皮肉だよね。

”正しくない“歴史の流れだと幕末の動乱が起きず、無駄に命を落とすことなく平和に暮らせるだなんて。そりゃ南泉くんも無邪気に「何がいけないんだ?」って思っちゃうよね。思っていいよ。まあ正しくないから放棄されて最終的には人間ですら無くなるわけですけど。

そうそう、なぜか”おっさん”こと井伊直弼にめちゃくちゃなついていた南泉くんなんだけど、序盤の戦闘で、時間遡行軍に襲われかけてる南泉くんを直弼が助けているんですよね。あそこで本能的に「この人はいい人!」って思ったのかな。って、猫かよ!(かわいいね)

江水散花雪は、パライソと合わせ鏡みたいな作品だと思っています。

”正しさ“を選び、残酷ではあるけれども、それぞれの役割を全うさせて任務を遂行したパライソ。

間違ったまま優しく穏やかに崩れていき、失敗しながらもなんとか任務を終えた江水。

どっちが正解かなんてわからないけれども(そもそも正解なんてないだろうけど)、最終的にあの本丸の子たちが笑えるなら、それが答えなのかな、と。

まんばの過去、折れた刀、この本丸の始まりの一振り……新たな謎が登場しました。(なんなら心覚の「俺たち江は……!」もまだ回収されてないですね)この先どんな展開になるかわからないけれども、この本丸には圧倒的な光パワーで正論パンチをしてくれる大包平が顕現したので多分大丈夫です。どこまでもまっすぐで、聡くて、気品があって、理想的な大包平がそこにいました。あのシーンが嫌いな人なんていないでしょ……!

今作のハイライトといえば兼さんと大包平それぞれの「私が来た‼︎」(意訳)だと思うんですけど、個人的にはまんばのラストソングがはちゃめちゃに刺さりました。

以前のエントリでも言っていますが、刀ミュの何がいちばん好きかって、歴史に残らなかった有象無象の人たちにも温かい眼差しを注いでいるとこなんですよね。今作では、まんばのあの曲にそれがぎゅっと詰まっていたんです。あのシーン、人ならざるものになった彼らを、微笑みながら斬りつけているんですよ。

「散るひとひら ひとひら 同じ花はない」

たとえ彼らが自我を失っていても、ひとりひとりの命に心を寄せ、そして絶つ。たったひとりでその世界に取り残された絶望的な状況ではあるのだけれども、その悲しみよりも、他者へ向けた慈愛に号泣してしまいました。

まだまだ書きたいことがたくさんあるけど、ホントにキリがないからこのへんで。

泣いても笑っても明日(もう日付変わってるから今日じゃん!)が千秋楽。本編でお芝居する小竜景光をナマで見るのは残念ながら叶わなかったけれどもそれでもこの物語を届けてくれたカンパニーに感謝しかありません。(黒衣さんもほんっとにカッコよかったです。兵藤さんマジで救世主……)小竜くん役の長田光平くんはこれが初舞台ということなので、これからにめちゃくちゃ期待しています!

まずは明日、無事に終わりますように。アタシは現地で応援してきます!!!!!!!!!!

『中島鉄砲火薬店』観てきました。

2022年の観劇初めは『中島鉄砲火薬店』でした。
作・演出は、ミュージカル『刀剣乱舞』の脚本を手掛ける伊藤栄之進さん。
キャストには刀ミュや刀ステで馴染み深い人が名を連ねていて、
さらに新撰組の“その後”のお話ということで、かなり気になっていました。

あ、もし刀ミュが好きで、『結びの響、始まりの音』が好きだったら、
今すぐこんなブログ閉じてチケット手配するかこの後あるディレイ配信を買ってください。

というのも、『中島鉄砲〜』と”むすはじ”があまりにも地続きだったんです。

舞台は明治時代の浜松。元新選組隊士の中島登(唐橋充)のもとに、
息子の登一郎(小西成弥)がやってきたところから物語は始まります。
登は過去に親友を殺めており、親友の息子・甘利(田村心)は彼に強い恨みを抱いていました。
そして父の仇を討つため、甘利は同志・内山(松井勇歩)とともに中島家に近づき……。

という感じで、登の過去の因縁をめぐってお話が進んでいきます。
文字だけ見るとお堅そうですが、描き方はとてもポップで軽やか。
笑っているうちに物語の世界にぐいっと引き込まれていて、
優しい気持ちで涙を流していました。

とにかく、登役の唐橋さんが魅力的なんです。
何を考えているのかわからないような飄々とした雰囲気でありながら、
その実、夢の中では後悔や自責の念に駆られていて、その痛みがとても“人間くさい”。
再演だから当て書きはされていないのだけれども、
まるで初めからその役だったようなハマり具合で、愛さずにはいられない。
そしたなにより圧巻だったのはその殺陣。
ああ、この人は新選組の生き残りなんだなって感じさせる殺気がバリバリでていて、
ゾッとするくらいめちゃくちゃにかっこよかったです。

息子・登一郎役の成弥くんのお芝居に関しては信頼しかなかったのですが、
(その信頼をうわまわる安定感とピュアな愛らしさよ)
今回驚いたのは内山役の勇歩くん。
関西弁の役柄っていうのも影響しているのかもしれないけれど、
すごく伸び伸びと演じていて、甘利とのコントラストが絶妙だったな。
対する甘利役の心くんは、役柄も相まっていささかお芝居が硬かったんだけど
シリアスなシーンでは、ぐっと胸を掴まれました。
多少硬かろうが、真摯さの見えるお芝居する人が好きです。
ちなみに若手組でいうと、拓土くんはワンコみたいでひたすらかわいかったです。

そしてやっぱり心を揺さぶってくるのは、トシさんなんですよね。
箱館戦争もとっくに終わっているから、登の夢の中(回想)での登場なんですけど、
いい意味で”むすはじ”のトシさんまんまだったんです。

(ちなみに演じているのは、”むすはじ”と同じく高木トモユキさんです)

 

あの公演で何度も聞いた「中島君」と呼ぶ声。
もちろんスピンオフでもなんでもないんだけれども、
あの世界線とおんなじ思いを持ったトシさんだったんだよね。
『中島鉄砲~』の方が先にできているから(今回は再演)、
むしろこのトシさんが”むすはじ”に出てきたとでもいうべきなのかな。

伊藤さんがブログで「ブレてない」とおっしゃってたのですが、
ブレてないどころか、なんならおんなじことしか言ってませんでした。
箱館戦争でトシさんが抱いていた感情。
自分の命の使い道と、この先を生きていく人への思い。
榎本さんに言及するセリフでは、自然と”むすはじ”の榎本さんが浮かんだりしてね。

もしかしたら「刀ミュを私物化するな」と感じる人もいるかもしれないけど、
作家性がなくなってしまったらそれこそコンテンツが死ぬと思っているので、
アタシはこういう形でトシさんと中島くんを補完できてうれしかったです。
ちなみに刀ミュ未履修で、下北周辺の舞台が好きな先輩と見に行ったのですが、
その辺のベースがなくても、物語としてとても面白かったと言ってました。


幕末の動乱を生き延びたからこそ背負ったもの、
そして生きているからこそ手にすることができたもの。
登が生きている「今」をすべて抱きとめる優しい眼差し。
歴史の先にある人々の営みに思いを馳せるような作品でした。

前途のとおり、描かれ方はとても軽やかで愉快なので、
気になった方(何度も言うけど特に”むすはじ”が好きな方)には
ディレイ配信をオススメします。

eplus.jp

回し物みたいだけどなんももらってません(そりゃそうだ)
アタシも配信でおかわりしよーっと。

2.5次元 of the year 2021

未曽有の感染症で、突然エンタメが奪われてしまった2020年。

2021年はそんな中で試行錯誤しながら立ち上がり、

エンタメと自分自身の距離を確かめるような1年でした。

 

かなり偏った作品しか見ていないのですが

その中でも特に良かった3作品+αを挙げようと思います。

 

3 

ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.3

 

新キャラが追加され、それぞれの役割や思いがより明確になった3作目。

いずれくる「最後の事件」に向けてアクセルを全開にしているような印象でした。

原作と同じ方向を向きながら、ミュージカルという表現方法で

作品の魅力を余すところなく届けてくれるモリミュには信頼しかないよ……

チケットが取れなさすぎて現地1回だけなのがほんとに口惜しかった。

続編、全力で待機しています。

 

ucok.hatenablog.com

 

2

ミュージカル『刀剣乱舞』静かの海のパライソ

 

わずか7公演で中止になった2020年の公演がようやく日の目を見ました。

「歴史を守る」という刀剣男士の使命に対して、

真っ向から疑問を投げつけてきたこの作品。

史実通り37000人を死に向かわせるために扇動し、

相手が人間だろうが刃を向け、あまつさえ命を奪う。

ショックは大きかったけど、こんな凄惨な出来事もまた歴史なのよね。

ラストの鶴丸の咆哮に、この物語のすべてが詰まっていたように思えます。

そして、大千秋楽の特別演出と伊達双騎の発表よ……

ライビュで見ていたのですが、同じ列に人がいなかったのをいいことに

声を殺しながらも号泣していました。楽しみ増えたね!

 

ucok.hatenablog.com

 

1位 

劇団『ドラマティカ』ACT1/ 西遊記悠久奇譚

 

あんさんぶるスターズ!!』に登場するサークル「劇団ドラマティカ』。

そのオリジナル舞台っていうことで、

キャラが役を演じるという二重構造になっていたのですが、

これが予想していたものの500000000倍くらいよかったんです。

これまでのあんステでは見られなかったド派手なアクションと生歌。

キャラクターと役柄とセリフがリンクして、

物語で描かれている以上の感情がおしよせてくる。

渉と北斗の師弟関係が大好きすぎる妖怪だから

(「エレメント」と「透明と仮面」は必修科目!)

クライマックスの三蔵と悟空のやりとりに、セリフ以上の想いが重なってしまい

毎回号泣していました。

そうそう、観劇後のブログに、

「ここの感情の乗せ方に無理がなくて〜」って書いたんですけど、

どうやらこのシーンはほとんどお稽古しなかったみたいです。

(一慶くんがイベント等で明かしていました)

お芝居しながら生まれた感情だったからこそ、

無理がなかったんだなーとめちゃくちゃ合点がいったよね。

次回作は嵐ちゃんが座長ってことなので、どんな物語になるのか今から楽しみ!

あんスタに新しい表現の可能性が広がったってことで、

これからの期待も込めて1位にしました!

 

ucok.hatenablog.com

 

 

特別枠

ミュージカル『刀剣乱舞』東京心覚

 

なんだよ特別枠って、って感じですが、

他作品と並べるにはあまりにも立ち位置が特殊だったんですよね。

コロナ禍の2021年だからこそ生まれた物語で、

それをこのタイミングで上演するってっていうことに意味があった作品でした。

歴史の真っ只中にいながらも、名前が残らない有象無象のアタシたちに向けて送られた

強烈なエールで、とてもあたたかいラブレター。

言葉にすると、とたんに安っぽくなっちゃうけど、

カンパニーとファンが築いてきたみたいなものを強く感じたんだよね。

ありがとう。そして、これからもよろしくです。

 

ucok.hatenablog.com

 

 

 

ざっと乱暴に振り返りましたが、

ここに挙げた以外にもたくさん素敵な作品がありました。

時間とお財布の都合上、どうしても推し作品中心になってしまいますが、

それ以外もちょこちょこ見に行けたらいいなーと思っています。

では、2022年もすてきな観劇ライフを!

 

始まり続ける物語の結末へ ~『劇団ドラマティカ 西遊記悠久奇譚』の感想~

雑な結論から言うと、ものすごく、ものすごくすてきな作品で胸が震えました。

ミリもネタバレしない方が500000000倍くらい楽しいから、少しでも気になってここに辿り着いた方がいたら、今すぐブログを閉じて東京凱旋公演の当日引換券を買うか大楽の配信予約してください!

 

※以降バレありなので、それでもいい方のみ進めてください。

 

今回の「西遊記悠久奇譚」は、あんさんぶるスターズ!!に登場するサークル『劇団ドラマティカ』の旗揚げ公演ということで、キャストではなくアイドルが作品を上演するという二重構造。これ、てんごではわりと珍しくもなかったりするのですが、あんスタでは初の試みで、どんな作品になるか正直かなりドキドキでした。

最推し北斗くんだけじゃなく、大好きな渉や、最近個人的にグイグイきている凪砂くんが出演。さらに脚本・演出は伊勢直弘さんだっていうから期待どころじゃなかったんですが、蓋を開けてひっくり返ったよね。

 

アタシたちが見ているのは、『あんさんぶるスターズ!!』の「劇団ドラマティカ」旗揚げ公演だ!!

 

扮装していればそう見えるだろって思うかもですが、これが意外とそうでもなくて。ちゃんとキャラが演じているって感じられたんですよね。

西遊記』をベースにしているから、役柄に関してはゼロから知る必要もなく、物語の世界にすっと入り込める。役者ではなくキャラクターに当て書きされた台本が、あんスタと西遊記の世界を巧みにリンクさせていきます。

北斗演じる悟空が、渉演じる三蔵とともに仲間を集めながら天竺へ向かうという、誰もが知るあの冒険譚。ひたすらポップで軽やかに物語が進んでいく。

 

第一幕のハイライトは金角・銀角戦。金角役は夏目くん、銀角は宗くんが務めました。そう、ここ兼役だったんですよー! アンサンブルはいるものの、演者はこの5人なんだということが強調されたように思えてめちゃくちゃたまらなかったです(語彙がバカ)

 

仲間の力をあわせて勝利!っていう少年ジャンプな展開はとにかく爽快で、旅の一行のことがどんどん愛おしくなる。お釈迦様のもとにたどり着けなければ輪廻を繰り返すと三蔵は告げるけれども、このメンバーならきっと大丈夫、そんな気持ちにさせてくれました。

 

ところが第二幕。様子がガラッと変わります。殺生によって破門される悟空。自由を求めていたはずがいつしか三蔵や仲間と離れがたくなっていたことにも気づく。ああああ、ここでも“あんさんぶる”したんだね……と感慨深くなるのは、アタシが夢ノ咲の転校生だったからだろうな。

そしてクライマックスで明らかになる三蔵の真の目的。

それは「天竺にたどり着くこと」ではなく、「天竺にたどり着くための旅を繰り返すこと」だったんです。

「始まり続ける物語」ってそういう――!!!!!

 

みんな大好きループもので、しかもそれが三蔵のクソデカ感情によるものだなんて……オタクは天を仰ぐしかないじゃないですか……。

正解にたどり着くために繰り返すほむらタイプではなく、楽しい今を終わらせないために繰り返すハルヒタイプ。なんならアタシらも夢ノ咲を何周も回ったね……。

 

自らの願いに囚われてしまった三蔵を救うために、この旅を終わらせようとする悟空。ラストバトルの刹那、静寂の中で交わした2人の言葉は、もちろん物語の中のセリフではあるのだけれども、“あんすたのキャラが役を演じている”という構造上、そのキャラクターの背景や関係性が言葉の奥に広がって、この舞台では描かれていない物語までをも想起させる。

そうだよね、渉と北斗の関係も師匠と弟子だもんね。

二重構造になっている作品ならではの感情に尊さが爆発して、気づいたら信じられないくらいに泣いていました。(てか、なんならこれ書きながら思い出し泣きしてるんですけど)

ついでにいうと、このパートの2人のお芝居が、シンプルにとてもいいんです!推しの一慶くんが推しの北斗を演じているというひいき目(ひいき目がすぎる)を差っ引いても、ほんとにほんとに良くって(また語彙がバカになった)。感情の乗せかたに無理がなくて、心の動きがストレートに伝わってくるんだ……。

 

ラストでまたループ確定ルートに入るわけですが、悟空には少しだけなにかが残っているような描写があり、もしかしたら次は……という淡い期待で物語は幕を閉じます。切ないけれどとても美しく、尊いお話でした。

 

これ、キャラクターが役柄を演じる二重構造だけじゃなく、毎回同じ話を繰り返す「演劇」っていうジャンルともメタにリンクするんだよね。次も、次も、次も同じ旅を繰り返すけれどもきっと全く同じ旅なんてなくって、もしかしたら新たな結末を迎えるかもしれない。

 

1度の観劇でも胸を打たれるけれども、2回目からは確実に見える景色が変わるタイプの物語。オープニングでメインテーマに入るとき、悟空の表情がガラッと変わる瞬間がありました。2周目じゃじゃないと気が付けないお芝居。歌に入るってことで心を作っているだけかもしれないけれども、もしかしたらあそこでこれまでの旅の記憶のようなものがよみがえっているのかな、なんて。

 

 

さて、この物語、最後の最後はどんな結末を迎えるのか。

このままループして終わるのも切なくていいけど、大千秋楽で変わってしまうっていうのもエモくていいですよね……。

 

旅の途中に彼らの偽者が現れたのが今回初めてだったということで、もしかして特異点になりうる何かがあるのでは? いや、偽者はもしかしたらどこかの時間軸の彼ら自身で……?なんて妄想もどんどん捗る。

 

彼らの旅も残すところあと4公演。

その終わりと始まりを、最後まで見届けようと思います。