『中島鉄砲火薬店』観てきました。

2022年の観劇初めは『中島鉄砲火薬店』でした。
作・演出は、ミュージカル『刀剣乱舞』の脚本を手掛ける伊藤栄之進さん。
キャストには刀ミュや刀ステで馴染み深い人が名を連ねていて、
さらに新撰組の“その後”のお話ということで、かなり気になっていました。

あ、もし刀ミュが好きで、『結びの響、始まりの音』が好きだったら、
今すぐこんなブログ閉じてチケット手配するかこの後あるディレイ配信を買ってください。

というのも、『中島鉄砲〜』と”むすはじ”があまりにも地続きだったんです。

舞台は明治時代の浜松。元新選組隊士の中島登(唐橋充)のもとに、
息子の登一郎(小西成弥)がやってきたところから物語は始まります。
登は過去に親友を殺めており、親友の息子・甘利(田村心)は彼に強い恨みを抱いていました。
そして父の仇を討つため、甘利は同志・内山(松井勇歩)とともに中島家に近づき……。

という感じで、登の過去の因縁をめぐってお話が進んでいきます。
文字だけ見るとお堅そうですが、描き方はとてもポップで軽やか。
笑っているうちに物語の世界にぐいっと引き込まれていて、
優しい気持ちで涙を流していました。

とにかく、登役の唐橋さんが魅力的なんです。
何を考えているのかわからないような飄々とした雰囲気でありながら、
その実、夢の中では後悔や自責の念に駆られていて、その痛みがとても“人間くさい”。
再演だから当て書きはされていないのだけれども、
まるで初めからその役だったようなハマり具合で、愛さずにはいられない。
そしたなにより圧巻だったのはその殺陣。
ああ、この人は新選組の生き残りなんだなって感じさせる殺気がバリバリでていて、
ゾッとするくらいめちゃくちゃにかっこよかったです。

息子・登一郎役の成弥くんのお芝居に関しては信頼しかなかったのですが、
(その信頼をうわまわる安定感とピュアな愛らしさよ)
今回驚いたのは内山役の勇歩くん。
関西弁の役柄っていうのも影響しているのかもしれないけれど、
すごく伸び伸びと演じていて、甘利とのコントラストが絶妙だったな。
対する甘利役の心くんは、役柄も相まっていささかお芝居が硬かったんだけど
シリアスなシーンでは、ぐっと胸を掴まれました。
多少硬かろうが、真摯さの見えるお芝居する人が好きです。
ちなみに若手組でいうと、拓土くんはワンコみたいでひたすらかわいかったです。

そしてやっぱり心を揺さぶってくるのは、トシさんなんですよね。
箱館戦争もとっくに終わっているから、登の夢の中(回想)での登場なんですけど、
いい意味で”むすはじ”のトシさんまんまだったんです。

(ちなみに演じているのは、”むすはじ”と同じく高木トモユキさんです)

 

あの公演で何度も聞いた「中島君」と呼ぶ声。
もちろんスピンオフでもなんでもないんだけれども、
あの世界線とおんなじ思いを持ったトシさんだったんだよね。
『中島鉄砲~』の方が先にできているから(今回は再演)、
むしろこのトシさんが”むすはじ”に出てきたとでもいうべきなのかな。

伊藤さんがブログで「ブレてない」とおっしゃってたのですが、
ブレてないどころか、なんならおんなじことしか言ってませんでした。
箱館戦争でトシさんが抱いていた感情。
自分の命の使い道と、この先を生きていく人への思い。
榎本さんに言及するセリフでは、自然と”むすはじ”の榎本さんが浮かんだりしてね。

もしかしたら「刀ミュを私物化するな」と感じる人もいるかもしれないけど、
作家性がなくなってしまったらそれこそコンテンツが死ぬと思っているので、
アタシはこういう形でトシさんと中島くんを補完できてうれしかったです。
ちなみに刀ミュ未履修で、下北周辺の舞台が好きな先輩と見に行ったのですが、
その辺のベースがなくても、物語としてとても面白かったと言ってました。


幕末の動乱を生き延びたからこそ背負ったもの、
そして生きているからこそ手にすることができたもの。
登が生きている「今」をすべて抱きとめる優しい眼差し。
歴史の先にある人々の営みに思いを馳せるような作品でした。

前途のとおり、描かれ方はとても軽やかで愉快なので、
気になった方(何度も言うけど特に”むすはじ”が好きな方)には
ディレイ配信をオススメします。

eplus.jp

回し物みたいだけどなんももらってません(そりゃそうだ)
アタシも配信でおかわりしよーっと。