ミュージカル『刀剣乱舞』〜江水散花雪〜 観てきました!

刀ミュの新作『江水散花雪』がついに大千秋楽を迎えます。いろいろ色々心配事が続きましたが、キミたちに会えて良かったよ!!!!

思えば初日配信から狂っておりまして、思いついてはふせった等に書き散らかしてましたね。だって、今まで見たことがない刀ミュだったんですよ!新作だからそんなの当たり前って思うかもしれませんが、そういうことじゃないんです。今までない切り口で、原案のゲームの内容にもガッツリ触れていて、さらに新たな設定も追加されて。この先の展開がさらに楽しみになる、”新しい”ワクワクが詰まっていたんです。

※ここから先は、過去作を含め息を吐くようにネタバレします※

桜田門外の変」を描いた月岡芳年の浮世絵『江水散花雪』と同タイトルということで、大方の予想通り、幕末を舞台にした井伊直弼関連の物語のようでした。

「ようでした」

井伊直弼の話ではあるけれども、アタシたちが知ってる井伊直弼の物語ではなかったんですよね。

ストーリーは、大包平、小竜、南泉の三振の遠征任務から始まります。この三振は顕現されて間もない、比較的練度の低い子たち。おそらく歴史改変の予兆みたいなのがあって派遣されたんだろうね。そこでいきなり、井伊直弼吉田松陰が邂逅するというまさかの出来事が起こってしまうんです。

出会うはずのない二人が出会ってしまった事によって、歴史があり得ない方向にねじ曲がり、修復不可能な状態へと進んでいくーー。

そう、今作は「世界が放棄される様子」を描いているんです。と、特命調査……

状況としてかなり”ヤバい”ことになりそうだと察した審神者は、本丸の古株の一振り・山姥切国広に合流するよう指示を出すんだけどここでの会話、かなりヒュッてなるんだよね。だって、この時点で審神者とまんばちゃんはとっくに気づいているんですよ。だから”あの世界”=”放棄された世界”を知っている長義の名前が普通に出てくる。そして審神者はまんばちゃんのパートナーに肥前を指名したんだけど、その理由をあえて”あの時代”=”幕末”に精通している刀だといってさらっと話題をすり替えているんですよね……。こっわ!

でも我々も審神者業(ゲーム)をしているから知っているんですよ。肥前くんも特命調査で”あの世界”にいっていたことを。

 

以降、歴史がねじ曲がったまま物語はどんどん進んでいきます。直弼にゆかりのある小竜くんだけは、直弼と松陰の邂逅の重大さを察し松陰と行動をともにしたんだけど、練度が低いせいなのか、そこからはなかなかにガバ。たとえば、松陰が会沢正志斎に会って影響を受けた「事実」はたしかに史実通り。でも、そこで正志斎が説いた水戸学は、尊王攘夷思想とは真逆のものだったんだよね。

乱暴にくくると、幕末は”思想の違い”で殺し合っていたようなもんなので、その思想が違うってことは、もう歴史が変わっている証でしかないのよ。でも「これは史実通りで問題ない」という判断になってしまうんだ……。「誘い込まれている気がするんだよね」って真っ先に気づくくらい察しはいいのにね。ただ、そんな小竜くんだからこそ、最後までこの歴史を修正できると信じていたわけなんだけど。

そして、肥前くんもこの歴史を修正できると信じていた一振り。

史実通りにするために、元の主・岡田以蔵に代わって「人斬り」の役割を果たします。でも改変された歴史の中では、それさえも無意味で虚しいだけなんだよね。「人を斬ってなんになるというのです!?」と肥前くんに問う“きれいな”以蔵の言葉は、以蔵のアイデンティティを全否定するもので、本来の以蔵に激しく投げつけるブーメランでしかない。

世界が放棄された後、そんな以蔵から刀(つまりは自分自身)を奪いその刃で殺め、命が潰えそうになってもなお刀を求める以蔵に、そっとその刀を返す肥前くん……。以蔵が背負っていた悲しい役割の先に自分がいるんだと言うことに、いやってほど向き合って、そこから立ち上がったんだもんね。キミはとても強いよ。

そんな肥前くんの「人斬り」を否定せず、気が済むまでやればいいといった兼さん。極になったのもあり、今回はずーっとみんなを見守っていたんだけど、変えられてしまった歴史に、静かに憤っていたのが印象的だったな。

新撰組はいまでこそ人気コンテンツ(こんな言い方するのやだけど便宜上ね)だけど、逆賊扱いされていたときもあって、両手を上げて幸せだったとは言い難い歴史を持っている。それでも、兼さんにとっては、箱館戦争で命尽きてしまうトシさんがすべてだったんだろうね。トシさんへのビッグラブソング、最高だったぜ……。

それにしても皮肉だよね。

”正しくない“歴史の流れだと幕末の動乱が起きず、無駄に命を落とすことなく平和に暮らせるだなんて。そりゃ南泉くんも無邪気に「何がいけないんだ?」って思っちゃうよね。思っていいよ。まあ正しくないから放棄されて最終的には人間ですら無くなるわけですけど。

そうそう、なぜか”おっさん”こと井伊直弼にめちゃくちゃなついていた南泉くんなんだけど、序盤の戦闘で、時間遡行軍に襲われかけてる南泉くんを直弼が助けているんですよね。あそこで本能的に「この人はいい人!」って思ったのかな。って、猫かよ!(かわいいね)

江水散花雪は、パライソと合わせ鏡みたいな作品だと思っています。

”正しさ“を選び、残酷ではあるけれども、それぞれの役割を全うさせて任務を遂行したパライソ。

間違ったまま優しく穏やかに崩れていき、失敗しながらもなんとか任務を終えた江水。

どっちが正解かなんてわからないけれども(そもそも正解なんてないだろうけど)、最終的にあの本丸の子たちが笑えるなら、それが答えなのかな、と。

まんばの過去、折れた刀、この本丸の始まりの一振り……新たな謎が登場しました。(なんなら心覚の「俺たち江は……!」もまだ回収されてないですね)この先どんな展開になるかわからないけれども、この本丸には圧倒的な光パワーで正論パンチをしてくれる大包平が顕現したので多分大丈夫です。どこまでもまっすぐで、聡くて、気品があって、理想的な大包平がそこにいました。あのシーンが嫌いな人なんていないでしょ……!

今作のハイライトといえば兼さんと大包平それぞれの「私が来た‼︎」(意訳)だと思うんですけど、個人的にはまんばのラストソングがはちゃめちゃに刺さりました。

以前のエントリでも言っていますが、刀ミュの何がいちばん好きかって、歴史に残らなかった有象無象の人たちにも温かい眼差しを注いでいるとこなんですよね。今作では、まんばのあの曲にそれがぎゅっと詰まっていたんです。あのシーン、人ならざるものになった彼らを、微笑みながら斬りつけているんですよ。

「散るひとひら ひとひら 同じ花はない」

たとえ彼らが自我を失っていても、ひとりひとりの命に心を寄せ、そして絶つ。たったひとりでその世界に取り残された絶望的な状況ではあるのだけれども、その悲しみよりも、他者へ向けた慈愛に号泣してしまいました。

まだまだ書きたいことがたくさんあるけど、ホントにキリがないからこのへんで。

泣いても笑っても明日(もう日付変わってるから今日じゃん!)が千秋楽。本編でお芝居する小竜景光をナマで見るのは残念ながら叶わなかったけれどもそれでもこの物語を届けてくれたカンパニーに感謝しかありません。(黒衣さんもほんっとにカッコよかったです。兵藤さんマジで救世主……)小竜くん役の長田光平くんはこれが初舞台ということなので、これからにめちゃくちゃ期待しています!

まずは明日、無事に終わりますように。アタシは現地で応援してきます!!!!!!!!!!