最高の歌舞伎デビューになりました  ー新作歌舞伎 刀剣乱舞『月刀剣縁桐』ー

アホみたいに忙し過ぎてブログにまとめることすらできず、日々が過ぎていっていました。前回のエントリが5月なんで6月〜7月がすっぽり抜けてますね。その間も観劇はしてました。以下、箇条書きでつらつらと。

 

・舞台「吸血鬼すぐ死ぬ」 今年イチ笑った!フィジカルな笑いの楽しさたるや

・「MANKAI STAGE A3! ACT2! 〜SPRING2023〜」凱旋公演

 ナイランありがとう&カルテットべしょべしょに泣きました

・ミュージカル『刀剣乱舞』花影ゆれる砥水 凱旋公演

 やっぱり花影くん、好きだよ……kiss kiss kiss

・「RUN FOR YOUR WIFE」

 ホンの面白さとセクマイを笑う構造にモヤリとしつつも、役者のお芝居は最高!

・「剣聖」

 逃げ場のない二人芝居。ハイカロリーのエネルギーを浴びてクラクラ。

・悪童会議旗揚げ公演「愛しの儚」

  「これがかっこいいんだぜ!」を照れずに真っ向からやってくれました。

 

え、忙しいんじゃなかったの?ってな感じだけど、休みに全部ぶちこんでるんです。気が触れているので。

そんな中でも自分にとってスペシャルな体験だったのが、「とうかぶ」こと、新作歌舞伎 刀剣乱舞『月刀剣縁桐』の観劇でした。(やっと本題だよ!)いや本当に本当にほんと〜〜〜〜〜によかったんです。

初めての歌舞伎ってことで、内容がわかるかな……と不安はあったのですが、その前にあったFFX歌舞伎をみた先人たちが「面白かった〜!」と絶賛していたので、これは良い機会だと思って一等席をえいや!と取って向かいました。あ、ここからは例の如く息を吐くようにネタバレをするのでご注意を。

 

開演前、刀剣乱舞とはなんぞやと書いた幕がドーンと降りてきて、これはわかりやすいな〜なんて思っていたら、前説が始まる。あたしみたいな初心者でも楽しめるように、歌舞伎の見方のポイントに軽く触れつつ、こちらのワクワクした気持ちを高めてくれる。ホスピタリティがすごいな。

2列目だったんですよ。ち、近い……

 

Youtubeでも見た押彦さんだ!



期待値がMAXになったところでいよいよ始まる本編。しかも、小鍛冶を思わせるシーンから。ちゃんと「刀」からスタートするのがめちゃくちゃ粋じゃないですか? 刀剣乱舞と歌舞伎の親和性が高過ぎて、この時点ですでにガッツポーズでした。なんなら名乗りがかっこよすぎて泣いちゃったよ……(通常運転です)

 

さて、今作でキーになるのは三日月宗近と、その持ち主のひとりだったと言われている足利義輝。義輝が「永禄の変」で討たれるという歴史が改変されようとしているので、それを阻止するために三日月らが派遣されることになるのですが……。そう、勘がいい人はもうお気づきですよね。歴史を守るためには元の主を斬らなければいけない可能性もあるんです。そしてそこには必ずといっていいほど葛藤があり、ドラマが生まれる。ちょっと乱暴な言い方になっちゃうんですが、刀剣乱舞の物語としてはわりと王道でど真ん中の物語なんですよね。でも、いや、だからこそほんっとに良かった。

 

そして、ストーリーがいいからこそ、歌舞伎のあらゆる演出も効いてくる。とはいっても歌舞伎の知識がピヨピヨすぎて、「うわー!”見得”ってやつだ」「は〜〜これが例の陰腹!」「早変えすご!」「え、姫めちゃくちゃ姫じゃん、かわいい……」「出た、KU!MA!DO!RI!」みたいなアホみたいな感想になっちゃうんですけど。

これをきっかけに古典にも行きたいと思っているんで、きっとあとから「とうかぶゼミで見たやつだ!」ってなるんだろうな。そう思うと、とても素敵なギフトだよね。

和楽器の生演奏、とりわけ琵琶の弾き語りはゾクゾクしました。イヤホンガイドでもあったけど、たとえば平家物語なんかはこうやって人から人へと伝わっていったわけなんだもんね。いいな、かっこいいよホントに。

 

歌舞伎本丸の刀剣男士もとても魅力的でした。

まずは三日月宗近。個人的には、メディアミックス本丸の中でもことさらに人間味が強い個体だと感じました。なんかねぇ、ずっとちょっと悲しそうな顔をしているんですよ。義輝をとりまくこの状況全てに胸を痛めているような表情。歌舞伎特有のお芝居とかお化粧のせいだけではないと思うんだ。わりとさらっと「未来世からきた」って言ってたから驚いている人もいたけど、たとえば刀ミュの三日月も(人こそ選んではいるものの)その時代の人に未来を伝えて「友」と呼んじゃう自由プレイをしてたりするので、手段としてはそこまでびっくりするものでもなかったかな。孤独な義輝に、付かず離れずの距離を保ちながらもずっとよりそっていたのが印象的だったよ。そうそう、紅梅姫が三日月に思いを打ち明けるシーンがあったんですけど、これまでのメディアミックスでは暗黙の了解みたいな感じで恋愛が描かれることがなかったので、とても新鮮で楽しかったです。

 

そして小狐丸。兼役の都合上あまり出番はなかったんだけど、野生味があってつよっつよ個体でしたね。もっと、もっとみたかった〜! けど、義輝様最高だったし、きっと松也さん右近さんの2人だったからのラストのお芝居になったと思うので、ここはしょうがないかなと。

 

小烏丸は美し過ぎました。刀剣の父……いや、母……? 色気があって艶やかで、強い。意外と血の気が多いのも良かったです。あの麗しい声はどこから出てるんだろうな。目と耳がとにかく嬉しかったです。舞も素敵でしたね。こんなん美の付喪神じゃん……

 

髭切も兼役ということであまり出番はなかったのですが、かわいすぎてお人形さんかと思いました。一幕の終わりにでてきたとき、羽織の房をふりまわしたり、なにかをちょんって蹴る仕草をしていてほんとに愛らしかったです。兄者も紅梅姫も信じられないくらいかわいかったので歌舞伎好きのライターさんにそのことを伝えたら、「まるる」っていう愛称で呼ばれてることを教えてもらいました。ま、まる、る……?  愛称までかわいらしすぎでは?

 

そしてそして膝丸! 今回の出陣メンバーでは推し刀の膝丸!  演じる吉太朗さんは唯一の21世紀生まれらしく(イヤホンガイドありがとうございます)そのフレッシュさに椅子からずり落ちそうになったのですが、SNSを駆使して宣伝していて、歌舞伎への心理的な距離感をとっぱらおうとしてくれていたのはシンプルにすごいな、と。髭切の出番が少なかった分、膝丸が出ずっぱりだったのですが、血の気が多くて、なのに兄者に名前を忘れられた時はびっくりするくらいしおしおで「はにじゃ〜〜〜〜」って泣いていて、そのギャップがたまりませんでした。そうそう、アタシは刀ミュの先行で取ったので、2列目とはいえ上手サイドよりで花道は遠かったんですね。でも、膝丸がめっちゃ近くの通路を通る演出があったのでかなり救われました。福利厚生が手厚いのよ。やっぱり膝丸はどの本丸でもかっこいいなぁ!

 

同田貫の夢女の皆さん、生きていますか? こちらは危うく夢女にされかけました!!!!!! 松也さんが何かのインタビューでサプライズ枠だといってたのですが、ほんとにバランスがいいというか、たぬが入ったことによってビシッと締まりましたよね。そしてとにかくかっこいい。義輝様の前で披露した舞も一振りだけ異質でゾクゾクしたな。最高! そういえば舞のときだったかな「益荒男振り〜」ってうたわれていて「あぁ、そうか、益荒男振りってそもそも刀からきた言葉だったよな〜」とにっこり。あと、お声がとても好みでした。危険だ、夢女にされる!逃げろ!!!!!!(手遅れ)。兼役の久直もよかったです!

 

他の方達にも触れたいんだけどキリがない!ので一旦ここで締め。歌舞伎というフォーマットのなかで、刀剣乱舞の魅力を余すことなく伝えていて、それと同時に歌舞伎ってこんなに面白いんだということも全部盛りでやってくれました。そういえば果心居士というか、異界の翁/嫗のお着物が蜘蛛の糸の柄だったのは、やっぱり土蜘にかけてるんですかね? もしかしたらもう一方の柄にも意味があるのかも。有識者〜〜〜。

 

そしてなんといってもやっぱり、闇堕ちした義輝様の無双〜三日月との一騎討ちはこの作品のハイライトでしょうね。

「永禄の変」は数多の創作で描かれ、義輝は畳に刺した名刀を次々に抜いて応戦したなんていう逸話も残っているんですけど(創作らしいんですけどね)このエピソードを彷彿させるように、階段に刺されている刀を抜いては戦い、抜いては戦いをしていました。つ、強い……。アクション班の斬られっぷりも最高でしたね。そして自身を操っていた異界の翁と嫗を斬り、ようやく憑き物が落ちるーー。

そこからの三日月との一騎討ちは涙無くしては見られませんでした。悪鬼のまま討つのではなく、正気を取り戻した義輝様とっていうのがまたよかった。刃を交えながらやっと、やっと語らえた2人。そして、ずっと近くにいたことに気づく義輝様……。とても悲しくて美しいシーンだったな。そして画作りがうますぎるのよ……。このシーンの劇伴(歌舞伎だとなんて呼ぶんだろ)がいまもずっと耳に残っています。

 

歌舞伎では珍しいっていうカーテンコールがあって、さらには撮影もできるっていう大サービス付き。エンタメとしての懐の広さを存分に味わいました。

 

膝丸かっこよかった〜〜!お手振りありがとうございます

 

お二人の関係性を知り、この写真の尊さが増しました。お手手は膝丸です。

 

ズームの必要なかった!小狐丸が大活躍する演目も所望じゃ〜〜〜〜

 

ほしがり宗近

 

翌日が休演日ということで、なぜかお団子が登場。かわいいかよ〜

 

お団子持ってるだけなのにイケメンなのなんで?????

 

お団子×源氏兄弟=はちゃめちゃにかわいい

 

こんな素敵なメディアミックスがみられたのも、刀ミュと刀ステがここまで物語を紡いできたからっていうのは大きいと思う。いきなり歌舞伎化ってのは多分ありえなかったんじゃないかな? 両本丸を応援し続けてきてよかった。ちょっとくらい胸を張らせてくれ。

そして、歌舞伎という文化を絶やさぬように守り続けてきた人たちが、同じくここまで大切に受け継がれてきた刀剣のお話を上演するっていうことに対しても胸が熱くなったよ。100年も1000年も「残したい」と思う人たちがいて、「伝えたい」と伝えてくれる人たちがいる。その想いがあったから、今でもずっと残っているし続いているんだよね。それが簡単なことではないというのは、素人目にみても明らかで、だからこそとても尊い

そうそう、ラストの口上で「名を残せし名刀も、名もなき刀工も〜」っていうのがあって、この本丸でも「名もなきもの」に心を寄せてくれるんだなと思ってここでもまたぼろぼろ泣いちゃいました。そもそも異界の翁/嫗の正体が切ないじゃんかよって話だよね。

 

刀剣乱舞歌舞伎、ホントにホントにありがとうございました。願わくば続編も待っています。まだまだ可能性がたくさんある!!!!!!!!