『東京心覚』エピローグのようなもの。

『東京心覚』が無事に大千秋楽を迎えて1週間。ディレイ配信も終わってしまい、思った以上にロスっています。こんなはずじゃなかった……(通常運転です)
 
初日は現地だったのですが、なんとなくお話の輪郭は掴めたものの、はっきりとはわからなくって。終了後、TLには「わっかんねーけど顔がいい」みたいなしょうもない感想が乱立していました。や、その気持ちもわかる。そこだけは確実にわかったもんね。(アタシだってそう思った)。

初日公演の配信後は、とりあえずキャラもしくはキャストに萌える勢、例のごとく考察する勢、わかりにくい物語にブチ切れる勢などなどがいて、ちょっとしたパニックになっていました。

そりゃそうだよ。これまではゲームの出陣と同じ6振りだったけど、8振りが出演することになったし。時系列や出陣先がバラバラで、水心子くんと同じくらいアタシたちも混乱していたし。(律儀に、どこかに出陣してるときはきちんと6振りだったんですけどね)

アタシはというと、見終わったときに感じた優しい思いと、ボロボロ泣いてしまった気持ちの正体が知りたくて、この物語をなんとか読み解こうと、まずは整理することから始めました。彼らはどこに出陣したのか。そして水心子は何を見たのか。たくさん考えて、あれこれピースを当てはめて導き出した答えは……

「わからなくていい」

陣場所は、タイトル通り「東京」。東国の独立だとか、江戸城を建てたとか、江戸を護ったとか、江戸を明け渡したとか、いろいろ歴史的なことは描かれているんです。でも、この物語で一番大事だったのは、
「そこで、誰が、何を思っていたのか」
ということに尽きると感じて。だから物語を“大きな流れ”ではなく“エピソード”で描いたのかな、と。

感じることに重きを置いてからは、まるで万華鏡のように、見るたびに見えるものが違っていました。そしてその度に、あたたかなギフトを受け取っていて。
 

好きなエピソードをあげたらキリがないけれども、個人的に今回一番響いたのはソハヤと天海の物語かな。
ソハヤノツルキは、家康の死後、彼の遺言に基づき久能山に奉納された刀。地図をみながら光世が「誰かがしまわれていたような……」って言ってたのはこのことね。(まぁあのやりとりでなんとなく察せるとは思うけど)
霊的な力によって江戸を守ることが、彼に与えられた“役割”。
そして、天海もまた、霊的な力で江戸を守る“役割”を担っていた人なんだよね。

ソハヤは、長いこと使われずに仕舞われてたことを根に持っているっていうのが公式設定なんだけど、それ以上にミュのソハヤには、江戸を守りきれなかった後悔っていうのがことさらに大きい気がして。

たとえばソハヤが「たまや〜!」と叫ぶシーンがあったけど、あれは花火なんかではなく、上野戦争の砲撃の音。「霊力で江戸(江戸幕府)を守る」という自分に課された役割が終わる瞬間を見ながら、まるで花火のような掛け声をかける皮肉っぷり。役割を果たせなかったことに対して、負い目すら感じていそうだった。

そんなソハヤとともに、7体の将門公の怨霊を封印した天海。「ついて来い」と命令するのも、数珠を渡すのもソハヤなんだよね。そして入寂のときソハヤにいうんです。
「本意ではなかったろうが、おかげで江戸は守られた」って。
この言葉を初めて聞いた時は、天海がソハヤたちを振り回したことを指してるのかなって思ったんですけど、違う。そうじゃない。
これは、ソハヤノツルキを久能山に仕舞ったことを指しているんだよね。天海は、ソハヤが“あの”ソハヤノツルキだってちゃんとわかってた。江戸を守りきれずずっとずっと後悔していたソハヤに、物理的に江戸を守らせ、さらにその存在を全肯定してくれた。もしかしたら、ソハヤが一番欲しかった言葉かもしれない……。

ソハヤは天海のこと「苦手なんだよな〜」って言ってたけど、心の底から苦手じゃないと思うな。家康のことだって狸爺って言いながらも顔が笑ってるような子なんでね(回想読んでね)。

今回は特に推しがいないな〜!みんなかわいいね〜!なんて言いながら、気づいたらソハヤのグッズをわさわさ買ってたんですが、見た目がドストライクってのもあるけど(おおいにあるけど!)、「光」だけじゃない、憂いみたいなのがみえたからってのもおっきかったような気がしてます。

無事に幕が上がったかと思ったら地震にあったり、緊急事態宣言で大阪公演が無くなったりして、一時はどうなることかと思いましたが、なんとか最後まで駆け抜けることができて本当によかった。「東京心覚」にはいろんな要素が詰め込まれているけれども、いちばん大きな要素は、歴史に残らないようなアタシたちの日々に対するエールだと思っているので!

大千秋楽のカテコで見せた水心子くんの涙は、水心子くんのものなのか、演じるこにせくんのものなのか、その両方なのかはわからないけれども、涙を零しながらもその感情に流されることなく言葉を紡いでくれたのが、刀剣男士然としていて素敵でした。誰かが呟いていたけれども、みんな刀剣男士として初めて迎えた千秋楽だもんね。ここからまた新しい歴史が始まるんだね。


おかえりなさい。そして、素敵な物語を最後まで紡いでくれて、ありがとうございました!