舞台『呪術廻戦』観てきました。

大好きなマンガの舞台化、しかも大好きな役者さんたちが出演するってことで、なんとしても見ておきたかった舞台『呪術廻戦』。幸運にもチケットを手にすることができたので先日観劇してきました。

 

率直な感想をいうと、エンタメ作品としてはとても面白く、その一方で2.5次元作品としては疑問が残るものだったなあと。だから、「面白いものをみた」っていう充足感と、「大好きなものを蔑ろにされた」っていう悲しい気持ちが同時にあって、心が複雑骨折してるんだよね。あ、先に言っておくと、役者さんたちは500000000点でした!

 

今回描かれたのは、マンガの1~4巻。アニメだと1クールかけて描いた物語が、約2時間半に凝縮されます。だから、ここが駆け足になっちゃうのはどうしても避けられない。1話完結のエピソードを繋いでいくタイプのお話ではないから、なかなかカットできないし。だから、ここに関してはそこまで不満もなく、むしろよくまとまってた方だと思います。

 

じゃあなぜ「大好きなものを蔑ろにされた」と思ったのか。それは、あまりにも演出が“ふざけすぎていた”んだよね。いや、全編ふざけ散らかしていたわけではないんです。シリアスなシーンもあったし、プロジェクションマッピングをバキバキに使った演出もあって視覚的にとても楽しかった。ただ、なんていったらいいんだろう、サブカル特有の悪ノリというか、斜に構えてあえてチープにする演出が、作品への没入感を削いでしまったんだよね。とくに書き割りをつかった演出は、プロジェクションマッピングへのささやかな抵抗みたいなもんだと思うんだけど、虎杖の生還シーンがまるでギャグのように扱われてしまい「ソウジャナイ……」と悲しくなってしまった。シリアスな作品が偉いわけでもないし、緩急がないと見ている方も疲れてしまう。ただ、原作に時々挟まれるコミカルさを都合よく増幅させて、根底にある世界観を覆ってしまったら本末転倒なんじゃないかな、と。緩急っていうよりもむしろノイズになってしまったんだよね。この辺の余計な部分をカットして、もっとキャラにフォーカスしてほしかったっていうのが正直なとこです。葛藤があるからこそ、その先のカタルシスがあるのに、なんかこう、ポンポンポーンって進んでしまった感じがあって、それは尺がどうこうって話でもないんだよね。

 

そういえば「『ステ』なのに歌ってた!『ミュ』じゃん!」っていうのもツイッターでちらほら見かけましたが、これに関しては正直瑣末なことというか、2.5あるあるなので、アタシはそこまで気にならなりませんでした。むしろ歌うまメンツを揃えているんなら、歌ってほしさすらある。ただ、歌わせるならやっぱり意味のあるものにしてほしかったっていうのはあります。ちゃんとミュージカルにしろなんていうつもりはサラサラないけれども、セリフを歌にしただけっていうのはちょっと安直すぎるのよ。あと、これは真希さんが大好きだから思うんですけど、「苗字で呼ぶな」っていうくらい「禪院」を憎んでいるのに、フルネームで「禪院真希」って繰り返し歌うのは違和感しかないんだよな。

 

プロジェクションマッピングを使った殺陣はぱっと見派手でとても楽しかったけど、せっかく肉体を使った表現ができるんだから、ここはもっとバキバキのアクションにしてもらいたかったなーと。おそらく、映像との兼ね合いもあって動きが制限されていたんだとは思います。でも、ジャンプのバトルもののアクションだぞ!もっともっと肉体でやりあうのが見たかった……流司くんとかめちゃんこ動ける子じゃんねぇ。

 

とまあ、こんなに不満たらたら言ってますが、作品としての全体の印象は前途のとおり「面白かった」んですよね。そう思わせてくれたひとつが、キャストの再現度。

2.5次元舞台の原初的な喜びって、「大好きなあのキャラクターが肉体を得て動いている」っていうところにあると思うんです。そういう意味では、キャラがちゃんと生きていました。今回楽しみにしていたのは、キャラビジュアルがでた時点で「こんなん優勝じゃん……」ってなったもっくんさんの真人と、どの作品でもキャラ愛を爆発させてくれる藤田玲さんの夏油。

真人はピュアな悪としてステージを縦横無尽に駆け回り、笑顔の奥に潜む底気味の悪さが最高でした。夏油は見せ場が少なかったのですが(これは原作通りだからしかたない)、声もアニメに寄せていて、存在感があってよかったなー。そして、今回割とノーマークだったけどめちゃんこよかったのが、わだまささんのナナミン! なんだかんだで結構お芝居をみているので知った気になっていたのですが、ここまでキャラクターに“尽くして”くれる人なんだなーと改めて驚きました。めちゃくちゃナナミンだったよ……。ごじょせんはあの一瞬で全部持っていってましたね。オペラグラス、スチャってしましたし。漏瑚と花御は“本物”だったし、パンダはパンダでした(パンダ)。女性陣もかわいかったなー。野薔薇ちゃんと真希さんの絡みもっとくれ……(これはただの趣味です)

 

てな感じで、エンタメとしては楽しかったので、呪術廻戦に思い入れがない人は多分普通に飽きることなく楽しめたと思います。実際同行した知人はそこまで原作が好きなわけじゃなかったので、とても面白かったと満足していました。わかる。そうなんだよ。こっちも笑うとこでは笑ってたし、手触りとしては全然悪くなかったんだ。でも、やっぱりね、原作と同じ空気をまとった作品が見たいんです。だって、それが2.5次元舞台の醍醐味だし、アタシはそこにお金を払いたいから。

 

まさかの第7波到来で舞台が軒並み中止になっている中、走り続けている作品は奇跡です。まずは1公演でも多くやれて、叶うならば最後まで上演できますように。おそらく次作もあるだろうから、そのときはいろいろいい方向に進んでたらいいな。色んな意味で、ね。