演劇の「灯」のようなモノ〜科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』初見の感想

最後に舞台を見たのは、緊急事態宣言が出る直前。

それから約3カ月、ようやく観劇できました。数字で見るとたかだか3カ月にも思えますが、先が見えないままエンタメ業界が弱っていく様を見ているのは、エンタメの端っこで働いている身としても、とても長くて辛い時期だったな。

 

見てきた作品は、舞台『刀剣乱舞』の新作。開催さえ危ぶまれたのですが、ホンと演出を変え「科白劇」という形で上演されることになりました。まずはその心意気にやられた。演出を変えるだなんて、体力のある座組じゃないとできないよね……。

 

とはいえ「科白劇」といわれたときは、正直全然ピンとこなくって、ググりました。なるほど、せりふと仕草だけのお芝居になるのか。ちょっと動きのある朗読劇くらいかな。立ち位置としてはスピンオフ的なもの? なんて思っていたんですよ。思っていたんですけど………

 

これは!紛れもない!舞台『刀剣乱舞』の新作だーーーーーー!

 

思った以上に動きがあるし、それでいてソーシャルディスタンスを保っている。動きやセリフだけでは補いきれない説明部分を請け負うのが、今回の科白劇に初登場となった講談師。メタ演出で「彼はこういう刀装なのだ」と紹介してました。なるほど、今回の連隊戦にも水砲兵なんているしね。そういう捉え方でいくのか。幸いアタシたちは「想像力」というものがある。口元の透明なシールドは見えなくなるし、物理的に刃を交えていなくても、彼らは斬り合っていました。

 

コロナ禍のさまざまな制限がある中で、最善を模索しながらもきちんとエンターテインメントとして昇華している。でも「こんな演出になるんだ!」という驚きは始めのうちだけで、あとはただひたすら目の前で繰り広げられる物語に心を掴まれ揺さぶられる。結局のところ、それがいちばん重要な気がするんだ!

 

詳しい内容に関しては、配信終わってからかな。ただ、気づいたことに関してはつらつら書いていこうと思います。

(バレ多分あると思うんで、回避するなら今よ!)

 

今回の科白劇は、刀ステのいつもの本丸ではなく、別本丸のお話です。多分。(末満さんがなにか仕掛けをしていたらまた別の話ですが、とりあえず今回はそういう感じで描かれていました)

ざっくりいうと、ステ本丸が、自分達が体験した特命調査「慶長熊本」とは違う記録を読み進める、という形になります。歌仙ちゃんは第3部隊の隊長なのね。維伝のように、ゲームの特命調査のストーリーに沿っています。「慶長熊本」は、とうらぶイベントいちシナリオがしっかりしていたので、それに肉付けされている感じ。そこに「刀ステ」ならではの要素がプラスされていきます。人間キャストに黒田孝高がいる時点で何事!?ってなるじゃないですか。だって自力で刀剣男士の存在にたどりついたあの官兵衛ですよ?(詳しくは『ジョ伝』でね!)いやほんと、こいつはなにを知ってるんだ……。

 

そして今回の座長はご存知の通りわだくまさん。そもそも彼の歌仙ちゃんは理想すぎるというか、めちゃくちゃかわいいのに拳で解決しそうな感じがバシバシあって、うちの初期刀を演じてくれてありがとうございますという感謝しかないんですけれども。慶長熊本でみえた彼の「覚悟」のようなものが、たとえステとは別本丸だったとしてもバリバリに感じられて本当に素敵でした。ゲーム内にでてきたときからずっと聞きたかったセリフも全部盛り。そして所作が本当に雅……。人見知りだったりプリプリしたりする人間っぽさとは別のところで、どこか達観した「刀剣男士らしさ」みたいなのを持ってるんだよな、と改めて感じました。綺伝、待ってます。

 

長義は、慈伝での扱われ方が本当に残念すぎて、いまだにそこに関してはもやっとした気持ちしかないのですが、今回はやっと彼が見えてきたというか、望んでいた姿が見られました。とりあえずですね、椅子への腰掛け方がパーフェクト長義だったんですよ。いや、なにを言ってるんだアタシは。でも、めちゃくちゃ長義だったんですよ……。そして練度があがっていた戦い方。この華やかな太刀筋は……まんばちゃんのそれと一緒だああああああ!!!!!!手首を返しながら舞うような殺陣なんです。殺陣師様ありがとうございます。ゲームではズサーって斬るだけだからわからない、この2振りの太刀筋をこういうかたちで表現していただけるなんて。きれいだよーーーーーーーー!(クソデカ声)あの殺陣難しかったろうに。梅津さん、気高く美しい長義を体現していただきありがとうございます。あれは間違い無く俺たちの死です(?)

 

物語におけるポジション的なのもあるとは思いますが、地蔵役のゆづくんほんっとにほんっとによかったです。人外感とか美しさとかはもちろんなんですけど、感情の吐き出し方が心にダイレクトに迫ってきて、なんども泣かされました。

 

そして、「みんなが女になって帰ってくる」こと、ガラシャ様。刀剣乱舞初の女性キャストで、しかも元宝塚だっていうもんだから、キャストが発表された時から話題になってましたね。ゲームの刀種が薙刀だったので(そりゃそうだ、女性だもんな)それをぶん回すバーサーカーガラシャ様が見たいなーなんて個人的に思っていたのですが(ただの趣味です)、蓋を開けてみたら……ひれ伏すしかありませんでした。ガラシャ様の女になるよあれは。第二形態、ちょっとヅカに寄せすぎでは?って思わなくもないんですけど、そんなのどうでもいいよね!だってかっこいいじゃーーん!っていう、「力こそパワー!」みたいなでたらめな説得力でねじ伏せられてしまいます。あの薙刀を手にした瞬間からもう、心の中でガッツポーズですよ。第二形態のブロマイドを売ってくれ、言い値で買うから(定価です)

 

前述の方々だけじゃなく、みんなみんなよかったです。ミュに既出のキャラをやる2人は比べられるプレッシャーもあったろうし、鵺を背負ったままの殺陣なんて絶対大変にきまってるだろうし、いきなり物語のキーになるし、シリアス多めのなかでコメディリリーフを任されているし、人間キャストもよかったなあなんて。このペースだと終わらなそうなので、キャスト寄りのざっくりとした感想はこの辺で。

 

物語には相変わらず謎がちりばめられていたり、不穏なセリフもあったりしたのですが、答え合わせはきっとまだ先ですね。そんなところも含めて、いつもの刀ステでした。「綺伝」にどうつながっていくのか楽しみです。演劇の「灯」のようなモノを消さずにいてくれてありがとうございました。その「灯」がある限り、追いかけていきたいと思っています。

 

そしてこれは本当にどうしょうもない話なんだけど、こんな状況下だから空席が結構ありました。舞台から発せられる熱に対して、こんなスカスカな座席で申し訳ない気持ちになってしまったけど、ほんっとに誰も悪くないんだよね。いちばん悪いのは新コロの野郎だぜ! アタシたちはせいいっぱいの拍手を送るくらいしかできないのですが、どうか、どうか最後までみなさまご無事でいてください。