『壽 乱舞音曲祭』を振り返って

それは、お詫びのような挨拶から始まりました。


ミュージカル『刀剣乱舞』は、年末年始に大型イベントを催すのが恒例となっていて、アタシも去年の歌合が終わった時点では、これを上回るイベント作るの大変だな〜なんてノンキなことを思っていました。


それが、新型ウイルスで、誰もが予想だにしなかった状況に。大切なチケットが紙切れになっていくのを何度も何度も体験しました。それでも、少しずつ少しずつ、イベントが再開していって、ふわっと希望が見えてきたようなそんなときに発表されたのが、このイベントの開催です。


会場の都合やらなにやら諸々あるだろうから、おそらくかなり前から2020〜2021年にかけてのイベント構想があったと思います。それが何ひとつ叶わなくなってしまった。そんな中での発表だったからあんな挨拶になってしまったというのは、想像に難くありません。


正直ガラコンなんて全然ピンと来なかったんだけど、それでも男士たちが見たくて、また紙切れになるかもしれないという不安を抱えたまま、なんとか勝ち取ったチケットを手にその日を待ちました。年明けにまさかの緊急事態宣言の再発令で「パライソ」の悪夢が一瞬よぎりましたが、今回イベントは対象外。あとは自己判断で〜という、それはそれでリスキーな状況ではあったのですが、これまでの感染症対策のノウハウをフルに活用しながら開催する道を選んでくれました。


前置きがながくなってしまいましたが、こんな状況下だからこそ、この五周年を記念した公演は意味があったのだと思います。

 

1部は、トライアル〜パライソまでの本公演を丁寧に振り返るコーナーでした。

「華のうてな」は、つはもの初出の曲ですが、ミュ本丸の三日月さんを象徴するような1曲だと思っています。あ、全作履修済みっていう前提で息を吐くようにネタバレに触れるので、危険を察知した人は回れ右してくださいね。

話をもどします。

ミュ本丸の三日月さん、かなり積極的に歴史に干渉しています。歴史を守りつつも、救える人は可能な限り救うっていうのが、彼の基本的なスタンス。そしてそれは、今でも形として残っている、確固たる存在としての自分の役割なのだという自負もあって。そんな彼の動きが明らかになったのが「つはものどもがゆめのあと」なんですよね。さらに「阿津賀志山異聞2018 巴里」では、この曲を冒頭に持ってきていて、より象徴的な1曲になってるんだよね。

そこから順番に、それぞれの公演を象徴するような曲が披露されました。「ユメひとつ」を除くと全てがミュージカルパート(いわゆる「一部」)の曲。なんならユメひとつも「天狼傳」の一番最後に披露された曲なんで、全部戦闘服での楽曲なんです。ミュージカルパートってこともあって、曲中のお芝居が秀逸でした。推しがいるっていうのもありますが、個人的にはみほとせの「瑠璃色の空」が刺さりましたね。葛藤する大倶利伽羅と、それをそっと見守り、抜いた刀を受け止める蜻蛉切。後半はそこに村正の温かい眼差しが加わって、結果アタシはというとずっと泣いていました。

つぎは手合わせのコーナー。ここの組み合わせは日替わりですね。男士たちのいろいろなセリフが聞けてほんとに嬉しかったなあ。原作の内番特殊台詞を入れてくれた日もあれば、この本丸ならではのやりとりがあったりして。見た中でグッときたのは、やすすとはっち、三日月とはっちの組み合わせだったんだけど、これは多分一番近くの記憶が天狼傳2020だったからかも。「ゆめのあと」まえに水鳥の羽音の映像があったのにもグッときましたね。刀ミュの脚本は、史実との絡めかたが絶妙なんだよ。

そして、序章(むすはじ)〜太刀風、未熟な私は夢を見る(葵咲)〜浦島くん曲(パライソ)〜のら猫二匹(天狼傳再演)とこれまた公演順に印象的だった曲が綴られます。未熟〜の江ミュ、あんみつデュエットまで審神者の集団幻覚だったのかな?って思うくらい、見たかったものの詰め合わせでした。パライソは幸運にも滑り込めた人なのですが(あ、地雷の人や、ふわっとでもネタバレしたくない人は数行飛ばしてください……)あの歌詞からも想像できるように、浦島くんが決意を固める曲なんです。たった1人で。「ぜったい逃げない」と。だからこそ、今回その横に兄ちゃんたちがいることが、どれだけ心強いか。「目を逸らさない」を、天狼傳で哀しい役割を引き受けたはっちに、「諦めるわけがない」を局長が佩刀していた曽祢さんに当てたのも泣けますね……。パライソくん再演、曲も演出も変えずにやって欲しいなあ。

「かざぐるま」は、時の流れのメタファーなわけですが、この曲を1部のラス前に持ってきて、刀ミュの5年間と重ねたのは秀逸。この曲の冒頭ソロを務めるのは、前半・膝丸、後半・村正になるのですが、この対比とても良かったです。膝丸は、源氏の家紋でもある竜胆の花を手に「人の子を育てるのはどのような感覚なのだろう」と思いを巡らすのですが、“育てられる側”は双騎で演じているんですよね。だからこそあの、悩んでいるような表情になったのかもしれないな、なんて。一方村正は、信康との思い出の花でもあるトリカブトを、慈しむように眺めながら歌う。そこにはみほとせ〜葵咲の思い出が確実にあるわけで。それぞれの刀にしかできない演出になっていてグッときました。次々と歌う刀が増えていく演出もよかったです。

ラストの「まほろばに」は、ああ、この人たちは神様だったんだな、と。ソロパートがあるのが、きちんと厳島メンバーだっていうあたりもいいですね……


1部はここで終わり。休憩中、ロビーこそざわついていましたが、場内で喋る人はなく、舞台上は再び消毒されていました。ここまでやってくれているんですよね。なんなら規制退場中に、空いた座席から消毒し始めてました。それでも、叩く人は叩くし、開催しないでほしいとか言いながら、都合のいいとこだけ切り取って「感動した」なんて言うんだよな。手を伸ばせばそこに「ある」って言う状態を保つためにどれだけの人数のどれだけの努力が重ねられてると思っているんだろう。


話が大いに逸れたので戻しますね。


2部は開催時に言われていた「ガラコン」を前面に出した演出から。初日は現地にいたのですが、男士たちが燕尾服を着て出てきたあの瞬間、会場中が息を飲んだような、そんな空気でした。発声可だったら、みんな信じられない声を出していたかもしれない……。そこからの『Mistake』で、ああ、そう言うことなんですね、と““理解””。

それにしても、初期刀たちの挨拶から続く『Additional Times』って、強烈なメッセージだよね。「今立ち上がれば心は負けない」「これまでと これからが追い風になっていく」「失われるようなヤワな時間を歩いてきたわけじゃないから」言葉全てが、アタシたちに、そして自分たちにも歌っているように思えてきて、ボロボロないていました。そのあとの『Signalize』幕末組の治安の悪さや、それに引っ張られて荒っぽくなるみほとせの『Can you guess what』もいいですね。つはもの〜むすはじ〜葵咲とこれもまた公演順のセトリ。前半はこの後、兼さんと曽祢さんの『Drive』だったのですが、後半はなんと村正組の『Impules』!!!!!!!!!!!  またこの2人で聴けるとは……向かい合って歌うところは、何度見ても鳥肌。この2振りは、声の相性もいいんだよね。

パライソ曲の後は『美しい悲劇』なのですが……まさかここが日替わりになるなんて! 『悲劇ガチャ』なんて呼ばれてたね。組み合わせが意外すぎて、このガチャはほんとに楽しかったです。(ちなみに現地で推し引けました。やったね!)

断然で脳みそをを溶かし、ソロでそれぞれの歌声を堪能し、浦島くんがけしからん『Scarlet Lips』でドキドキしてるうちに、『獣』のターンですよ……。配信は全公演行われていましたが、ライビュがあったのは膝丸ラストの17日と、大楽の23日のみ。それまでは、落ちサビ前の清光ちゃんの叫びが「上げろ〜!!!!!!」だったんですが、その2回は「届け〜!!!!!!!!!」だったんですよね。そう、彼らは、遠くまでーーそれこそ今回涙をのんで現地を諦めた人たちや、いろんな理由で足を運べなかった人に「届けよう」としていたんです。ありがとう、届いたよ、全部届いた。


ラストは戦闘服に戻って、三日月と小狐丸による『向かう槌音』〜新しい歌詞とアレンジの『刀剣乱舞」。ホーンやストリングスが入っていて気持ちよかったのですが、それ以上にアカペラのパートが圧巻でした。こんなに厚く、熱くなるだなんて。


それにしても、大楽の三日月と小狐丸のカーテンコール最高だったな。

「私たちの本丸は、こんなに大きくなりました」と広げた手の後ろに並ぶ刀剣男士たち。刀ミュはゲーム同様6振りずつの出陣だったので、本当に少しずつ、少しずつ増えていったんだよね。トライアルから支え続けてくれた男士もいれば、途中から参加してこの本丸を盛り上げてくれた男士もいる。今は誰もがここに欠かせないメンバーなんです。

アタシたちファンも、トライアルからずっと応援してた人もいれば、アタシみたいに何かのきっかけで途中からハマった人もいる。全ての人が「自分と刀ミュ」の物語を持っていて、それがこの場でひとつになったような、そんな宴だったような気がします。


宴は一旦お開きになりましたが、まだまだ出陣予定が控えています。まずは、この「壽 乱舞音曲祭』、ラストまで完走できたことを心から祝福しつつ、最善を尽くしながら次を待とうと思います。


このようなステキなイベントを開催していただき、本当に本当にありがとうございました。力になったよ。