もうひとつの幕末天狼傳。ーミュージカル『刀剣乱舞』幕末天狼傳2020初見の感想ー

 天狼傳だけど、天狼傳じゃなかった!いや、最高の天狼傳だったけど!!!!!!!

 いきなりすみません。先ほどミュージカル『刀剣乱舞』幕末天狼傳2020観てきまして、混乱と興奮を抱えたままなんです……。再演だと思ってました。いや、再演ですけど……再演って呼んでいいのかわからないくらい別の作品でした。それはとてもポジティブな意味で。大好きな天狼傳が、もっともっと大好きな形に生まれ変わるだなんて!でも根っこは一緒なんですよ。まだぐちゃぐちゃなままですが、このまま勢いで書いてしまいます。あ、息を吐くようにネタバレするので、未見の人は回れ右だぞ! 初演観たからって安心するなよ! アタシは、天狼傳2020の話をするんだ!

 話を戻します。幕末天狼傳。初演は初めて現場にいけた公演ということもあり、思い入れたっぷりの作品です。ひっさびさに大好きな沖田組が揃うってだけで、もう大興奮よ! みほとせも再演で細かい部分をけっこう変えてきたので、おそらく変えてくるだろうとは思っていました。思っていたんですけど、オープニングで、そりゃもう初手でやられてしまいましたね。池田屋で戦う新撰組。傍らには、彼らの刀だった刀剣男士たちがーー。そうだよ、この子たちはあなたたちの刀だったんだよ!もう、その時点で胸が熱くなってしまって思わず涙が……(あ、通常運転です)。初演でももちろん一緒に戦ってはいたんだけど、今回は1組ずつ丁寧にやってたんだよね。

 ストーリーの流れはだいたいは初演と一緒、なのですが歌がほぼ変わっていました。変わっていなかったのは「爪と牙」「かっぽれ」「ひとひらの風」くらいじゃないかな。あんみつちゃんたちが、ディズニーばりのはちゃめちゃかわいい曲を歌ってたんですけど、あまりにもかわいすぎて正気を保つので精一杯でした。なにあのにゃんこたち……。ミュージカルで歌が変わるってことは、それはつまり演出がガラッと変わるってことです。当たり前体操な話ですが、感情の立てかたが全然違っていて、違う角度から描かれたもうひとつの物語になっていました。そして、最大の変化。それは……

「沖田くんが闇堕ちしなかった」

 初演では、ネコのような使い魔に唆され、時間遡行軍に操られてしまった。だけど今回は違ったんです。あのネコが出てこないな、って思ってたら、やっぱり出てきました。でも違うんです。初演のときとは全然違う。沖田くんに優しく語りかける。そして、言うんです「よきかな、よきかな」と。え、待って、ネコ……え……。そこから、知ってる天狼傳とちょっとずつ違ってきます。苦しんでいる沖田くんを見ている清光と安定。あれ?なんでいるの?そして近藤さんの処刑寸前に飛び込んできたのは……時間遡行軍だ!沖田くんじゃない!!!!そうだよね、沖田くんは闇堕ちしてないもんね?そして沖田くんを連れてくる清光と安定。沖田くんは近藤さんのために、時間遡行軍と戦うーー。そう、初演とは完全に違うルート。「三日月宗近という機能」が発動した時間軸だったんです!!!!!!!

 大きな歴史の流れは変えないけれども、救える人がいるなら手を伸ばす、それがこの本丸の三日月宗近なんですよね。時間遡行軍の手に堕ちること無く、合流するという約束を果たすことができた沖田くん。もちろん命は尽きてしまうけれども、それでもあるべき姿のままで最期を迎えることができた。ああ、思い出した、この本丸はそういうとこだった。どこまでも優しく、あたたかい。あの衝撃のラストは変わらなかったけど、このほんのちょっとだけ救いが、あまりにも胸に響き過ぎた。これまでの物語の積み重ねがあったからこそできた新しい展開だよね。幕末天狼傳2020、ホントにホントに素敵な物語でした。ありがとうございます……。

 二部の感想は別のエントリにしようかな。そうそう、しょーもないこと思い出したんでメモついでに書くんだけど、かっぽれ前に兼さんが酔っ払って寝転んだとき、袴がベロンってめくれちゃって、膝小僧丸出しでした。ヤンチャだね!

 東京公演で新型コロナウィルスの罹患者が出てしまい、地方公演もなくなり、一時はどうなるかと思った幕末天狼傳ですが、なんとか無事に凱旋公演ができてよかったです。全国的に感染者がふたたび増加していて予断を許さない状況が続いていますが、千秋楽まで無事に駆け抜けられることを祈っています。来週末も観にいけますように。