「みほとせ」への最高のアンサー:ミュージカル「刀剣乱舞」〜葵咲本紀〜

 さて、葵咲本紀。ミュージカル「刀剣乱舞」ひさかたぶりの新作ってことで死ぬほど楽しみにしてました。しかも、みほとせの続編にあたる作品なんて、期待しかないじゃないですか! 葵ってことは徳川家のことなんでしょもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 今回もまったくもってチケットが取れてなかったのですが(だから小銭払い続けてる意味w)、当引でどうにかこうにか行けることになりました。

 超いまさらな話をするのですが、刀ミュの物語は初期三部作(便宜上そう呼びます)の「阿津賀志山異聞」「幕末天狼傳」「三百年の子守唄」がそれぞれ独立していて、同じ本丸のお話ではあるけれど、繋がりはそこまで深くないので初見でも楽しめます。そして
「阿津賀志山」→「つはものどもがゆめのあと」
「天狼傳」→「結びの響、始まりの音」
「みほとせ」→「葵咲本紀」
が、それぞれの続編的な立ち位置です。


※葵咲本紀はもちろん、過去作に対してのネタバレもありますので、それでもいい方だけ読み進めてください。


 本作の時間軸は、みほとせの途中。信康が検非違使に殺された後のお話になります。家臣として家康に仕えてた刀剣男士たちはその史実通りに任務を終え(つまりその歴史においては亡くなって)、彼の元を去ります。残っているのは井伊直政に扮した村正と、本多忠勝に扮した蜻蛉切のみ。「あの頃は楽しかった」と感傷に浸る村正が意外でした。彼に関してはまた後ほど。


そんな中、徳川家では、信康亡きあとのお世継ぎ問題が発生します。2代目となるのは結城秀康か、徳川秀忠か。


後の世で「天下を2度逃した」と言われる結城秀康御手杵は元主である秀康のことを篭手切に語りきかせます。


そう、今回は天下を取れなかった秀康の物語を中心に話が進んでいくんです。


秀康の想いに感応して現れた刀の付喪神(ダークサイドですね!)と時間遡行軍。彼らを倒すため、鶴丸が隊長となり、結城家と縁のある御手杵、明石、そして篭手切くんが任務に当たる……とまぁこのままだとストーリー説明に終始してしまうんで、続きは本編を観てねって感じなんだけど。


とにかくたくさんの気づきがありました。


まずは、時間遡行軍の存在について。
これはむすはじでも散々言及されてましたね。彼らは、名もなき刀の成れの果てなのではないのか、ということ。
むすはじのときは、おなじく名もない刀である巴形薙刀が、彼らに思いを寄せていたのですが、今作では明石がガツガツ切り込んでいきます。
そして今回、時間遡行軍と感応してしまったのは「名もなき刀」ではないんだよね。作中ではあの刀がなんなのか明確にされてはいませんでしたが、郷義弘作の刀である篭手切が「先輩」と呼んでいて、なおかつ結城秀康が所持していた刀なので、「稲葉郷(稲葉江)」なんじゃないかと想像しています。刀剣男士としては顕現してないけれども、別の形で付喪神が宿った刀。つまり、刀剣男士のもう一つの可能性でもあるんだよね。
彼らを殺めていいのか。彼らと自分たちの違いは?正義の名の下に戦っているが、その正義は本当に正しいのかーー?
 先輩である彼を折りたくない(であろう)篭手切に対して、残酷なまでに問いかける明石。しかも戦闘中っていう、余計なことを考える余裕なんかない中で。「全てを救えないなら、誰も救ってないのと同じ」だという明石の言葉は本心なのか。そしてそれは、誰に向けてる言葉なのかーー。


 そう、それはきっと三日月に、なんだと思っています。


たとえ全てはムリだとしても、歴史の中で悲しい役割を背負った人がいるなら、手を差しのべて救おうとするのが、この本丸の三日月なんだよね。
 つはものでは、泰衡殿に想いを託し、義経公と弁慶を救った。そして今回も秀康を救おうと、彼が暗躍していたことが明かされる。
 全てを救えないのにもかかわらず、それでも手を差し伸べることは偽善ではないのか。明石は篭手切に尋ねながら、自分自身にも問いかけてたのかも、なんて。
 もともと本心が読めないという設定の刀剣男士なので、彼の真意がどこにあるのかはわからないんだけれども、それはこの本丸でいずれ答えを出してくれるのかなって思ってます。


そして、今作で気づかされたのが、村正の不器用なまでの優しさ。や、もともととても優しい刀なんだと思います。だからこそみほとせでは「徳川に仇なす刀」である自分は常に距離をとっていたわけだし。
 そんな村正だからこそ、他の仲間たちとの別れを悲しみ、信康の死を誰よりも重く受け止め、さらには家康を憎んでいた。その言葉を聞いたときは驚いたけど、これまでのことを思い返すとスッと入ってきました。そんな村正を支え、ときに叱りながらも寄り添う蜻蛉さんもまた優しい……村正1人に背負わせないのだという思いは、みほとせから一貫してるよね。


  他のメンバーや歴史キャストに関してまだまだ書きたいことあるけど、この辺で一旦やめておきます。キリがないw
 
 葵咲本紀は、みほとせへの最高のアンサーだと思っています。そして刀ミュ史上最強のハッピーエンド。ここの本丸の三日月が目指す世界は、とても優しい。

 


勢い余って書き綴ったけど、なんせまだ1回目。これから感想はどんどん変わっていくだろうし、気づきも増えていくと思います。でもこの段階で記したかったんだ!!!!!


明日また観劇してきます。では!

 

追記:秀康の想いは「天下を取ること」ではなく「兄と引き離されたこと」に関してほうが強かったんだね。今日の観劇で改めて感じました。